耳に響くあなたの融けた残響






















わたくしの耳にはあなたが
暮れていく赤のなか
歩いていくその足音 影 踏み抜いた小枝を 
刺し貫いていく針と糸
その白い軌跡が 
耳掻き棒の影になって 
なめらかな塵を吸い寄せていく
甘い闇に耳穴が融けて小宇宙になった
引力が塵芥を引きずる水平砂時計に 
わたくしの時間は止まったままのよう 
黒く透けた風呂敷のような風の中 
握ったきみの手を憶えている 
わたくしのネジ捲きの記憶 
それによって進んでいくわたくしの躯は
闇と重なった深度を 
海底の青に包まれたまま進んでいる