夢表面
あなたの夢に触る 月夜のぽっかりと開いた光の泡 風が撫でるように梳くすすきの正面 たなびく厚いすすきの髪は 夜に磨がれて 踊るように放心している 濡れた泡面は揺らぎながら眼をいっぱいに覆い シャボンのなかの気流にはなんだか 夜気に染まった夢の どろどろとした内包物が 夕暮れを満たす無音の咆哮 夜の感情の羽ばたきのような形で その濡れた泡面を張りつめている その幻灯の表皮にわたくしは 駆け抜けるあなたの影を見る 白兎のように綿毛に包まれた残光をのこして ちょこちょこっと駆け抜けるあなたを見る 通り過ぎる梢のように きみに触れるわたくしの手は 流れる軟体になったあなた 生体の川に差しのべられ そのゆわんだ表皮に跳ね返させられる その弾力の振れ跡の波線が描くもの それがわたくしたちの日常 反響する愛というかたちをひく線