わたくしのなかの一本の釘が鳴る



























組み附した腕 
透明な化石の傷 
ほころびの中にだけ咲く 
微小な花が 
呼吸のなかに埃として含まれた 
咳き込んだ声 擦れた声 
きみはもうずっと疲れ切った 
魂の凍えきった蓋のような人々を愛す 
そこは生々しい肉の慟哭があふれる坩堝 
最も汚れたものは 最もうつくしいと 底の抜けたボロ靴はしゃべる 
そこを通り抜け 
それでも其処に染まらない 
留まらない 
すべての肉を煮る 
骨をずって崩れ落ちる腐臭のなか 
きみはひとひらの真っ白な粉雪 
その地獄のシチューに煮えたぎられても 
きみは決して穢れない 
僕はきみのなかを通り抜けた幾千の錆び切った釘のひとつひとつを体のなかに埋め 
血の涙をながす 
それだけがただひとつ真実の愛ゆえの涙 
眼を開ききって眺めた 
充血した地上を見つめる太陽の眼 
僕はきみとともに歩かなければならない 
蹂躙された肉体 
流血した肉体だけが 
開かれた痛みとともに 
すべてを赦し 
すべてを愛す 
完全なる開放と完全なる閉鎖が同居し 
愛と憎悪が空無を彩る 
安定と冒険が横並びに回転し 
絶望に石を積む 
僕はきみの舞い降りる大地だろうか 
それとも止まり木だろうか 
わたくしは停止した大地 
平定され流転する大地 
そこには雨も風も空も宇宙も 
みんな軋めいている 
人々の孤独を癒す 
うたを 草場のかげにみつけた