無顔の微笑み










 



ぼくは恐ろしい悲しみと接続される
無というペンキで塗り潰された顔
記憶がひとつひとつ消えていく
その穴のあいた意識
失われた記憶ののぞき穴から見える
恐ろしい痛み
裸電球で照らされる
残虐さに弄ばれる肢体
裸の痛みが
ぼくの脳細胞を照らす
その虚無に蝕まれた身体の
跳ねるような微笑みに
なすすべなく
憐れむ

過去は救うことができない
忘れることができるということの恐ろしさ
その飲み込まれた闇が
代償として奪い去った表情
剥がれ落ちていった顔 が
壊れた海岸線で停止する
そこには流血に群がる金色蛾のような
妖精の種火が舞う
その火打ち石の火は灯り
愛が煮え立つようにして
寂しさを火に焼べる
さしても
煙りはあがらない



ぼくはその眼その顔
その微笑みに
すべての傷ついた愛を贈る