人魚










 



記憶をトオクヘ巻き戻してく

不思議な輪っかにツイタ

幼稚園ごろの輪ゴム遊びの記憶

そのハガレオチタ一片の桜の花びらのような欠片が

ようやく手を差し伸べられた昼寝混じりの陽射しに

指し示されて

影の包んだ夜風が撫でる草原のカーブと

平らの上に溢れかえる陽射しの紅茶が

寄りかかるソファの背もたれのように

釣り合いのとれた時間の糸を引く

小天秤の小さな秤皿の上に

ちょこんと載った手をついて座る女の子

意識の帆先は青い空にたかだかく掲げられ

白い尾鰭が煙のように融けていった

陽射しの滑る被覆面についた

小さな白い足跡も彼女のモノだったし

転がった鉛筆のとがった芯に集約されていく

夜の先端のようなほころびも

彼女のモノだ

水筒の中の色めく光の大嵐も

彼女のモノだったし

レースの白いカーテンを揺さぶる微風の

流した時のまどろみも

彼女のモノだった

今日はティーカップの曲線

持ち手の指をさらう陶器の骨を撫でて

レースに染まる夕日と風に

紅茶をそそぎ

きみが茜に身を染めるのを待って

夕涼みに出かけよう

おはよう

きみ