注射器の情事










 

注射針 逡巡する血管
わかりきったほど透明な独房
泥のような血液にセックスが盛り込まれる
透き通った注射器の液状部屋で
照明に照らされた幾晩ものセックスが演じられる
突き立った腕に走る血流に混じって
掃き出される
硝子のような欲望の破片
星を貫く悲しみの破片が
夜のような表情の被膜に被われて
感情の雫を転がす
その衣服のような心情には
激しさを抱いてやることしかできない
そこまでして
ふっと吹くような糸を吐き出して
空を駆けていく
汲まれた水は瞳のように黒い空を見つめる
そこに染みついた
夕闇の温度は
体表を包み守るのではなく
焼くようにして走る!

ではいったい何が
スプレー缶の白いムースのような糸でもって
拒むのだろうか
それが愛なのだろうか
僕は焼き印でもって痛みを
予約している
ケシズミのような痛みでもって
その時を待つ
僕の水源は
漲るほどの水苔の緑で覆い尽くされ
やわらかな水草で黒い星の落下
瓦礫の着水を待つ
そうしてその紺色の水中夜が沈めた
水死体のような愛を抱く

そうお前が恐れるのはお前自身
それは歯痛にできた黒い痕跡
奥歯の鈍痛のような自己不信なのだ!


ぽこっと目玉がひとつなくなっているぐらいいいか