ショウジョウバエの呟き
いいんだよ死んだ時からわかってたんだ
蒸留水の天秤にのせた君の縁取りには
野蛮な鍋がとりつけられてて
空のかまちには足跡だけがついてたって
香水のにおいは半裸纏った君の油で磨きこまれた受粉した蕊の肌
幼児の手心で娼婦の布団に抱き込まれた花火は
感電した恐怖の詰め綿で耳も鼻も口も空も塞いでしまった
その氷った薪に手をあてた看板の目撃証言に
小中高の螺旋階段 硝子の墓は振り落とされてしまった
広域捜査の逆走する河原の風が転んだ
縮んだ半ズボン下のかかとに噛みついた夢の破片が刃の根
死んだ硝子の芽になって僕の心中を残らず脳天から引きずり出した
ロバの肉は硬いからといって僕がそこに埋まることはない
きみはただ切り出された煮凝り
半透明な涙を配っていっただけ
楊子でもってかきむしった口内には
腐臭のやさしいまなざしがあって僕は生きていける
と錆びたトタン板で肉と骨の間を切り開いていくそしてぼくのアジトはできあがる
からっぽの肉の家
ショウジョウバエの狂乱の畑
わたくしの噛んだつまようじにはいつもきみの味が沁みる
てんとう虫は閉じた天板を開け
黒い下着姿で遁走する
むしられた羽根によって
飛ばされた春の突風