こんなものはよむな

 












絶望的な話
カピバラには鼻がないらしい 桑畑の鶏小屋には耳のないニワトリがいて




 


誕生石には蠅が混入されていて


 

ゲロを吐くぐらいしかできないこの足のもつれた疲弊感 皆既日食のような影の焼けた感じが僕の大切なものを磨耗させていく 本当に大切なものが消耗していく なぜだろうこの新鮮さを失ってしまった垢のような感覚 するどい夜行生物の直感のようなものは残らず折られた100円のビニール傘の骨のようになってしまった わたくしは抵抗しているのに 沼は僕を覆う汗のように むしろ大気のなかに充満する僕の吐いた二酸化炭素のように暑い 寝苦しい夏の夜だ どこかに逃げださなくてはならない 空気のきれいなところに 海風でもいい 島風でもいい 山風でもいい ぼくの手をひいてどこかの木陰へと つれていくト音記号にのって ぼくは逃走する 一歩の足も動かさずに 人の首を絞めるのが趣味です でも実際にしたことはありません 浅潮のお茶漬けを食べて干涸びていった ちいさな骨 そのサンドイッチの砂浜で わたくしはわたくしの耳についていたピアスを見つける 頑強な門番の鼻の穴からはいったちいさな蟻が その巨大な蟻塚を手で叩き壊す大男を引き裂く 縮んだ靴下 靴下はなんで全部片方しかないんだろう きっと靴下の片方だけが消滅するというのが世の法則なんだろう サランラップを千切った時に折れて貼りつくもの
それがわたくしの不眠の正体です だってぼくはずっともう布団でねむっていない 眠る準備が剥がれ落ちて 剥がれるべきではない疲弊までがささくれだってしまった 










おまえらみんな死ねばいいと 潰れて乾いたオレンジの蚊が 背をしゃんとして はりついていた 弾力ある闇 くすぐられて窮屈に絞められた裸のにわとり 突端にたった三脚カメラは水平線に向かって 記念写真だ セルフタイマーで もちろん押した奴は崖下の荒波の泡しぶきに食われて 紐と皮になって 漂うぼろ布 鯨ベーコンは缶詰めにのって漂流する いかやするめにのって漂流する 夜這いのかけかたという本が 草むらのようかんのように潜んでいる ああそこまでは良かったのに なぜか信者は指切りを間違ってぽきっと指を折った その瞬間わたくしの足は遠ざかっていった遠泳にでかけたおじいさんは足をつって溺れたそして煙になって             疲れた。