ヴィタール
世界がまあるく潰れてく 「脳と仮想」→エラン・ヴィタール(躍動)→「ヴィタール」→Bankartの回廊→内臓のデッサン→沖縄→匂い うすぐもりの春 風がかたんと鳴った やもりの寝床にはひそりと侵入した影が やまびこの小僧をつかまえて 蛭の言づてを吐かそうと やっきになっているころ ねっころがって 青草をはんでいた昼が わっと雲をねって 風に流していた 闇のころもでつかんだ腕には 細い 細い 少女の体が巻きついていた 少女の腕はかぼそく 空に編んだ 雲影をつかんだものとして 泡のようにふくらむ雲 の子供を宿した 雨がぱらっ ぱらっ と 降って 女の髪を打つ ぱらっ ぱらっ と 雫が乾いた砂地に落ちる ああ睫毛のピンと伸びた指先には 空の中ほどに止まった雨 ヴィタールはすごい 仮想、仮想 「ヴィタール」