2005-01-12 月のツリ針 無限に澄んだ空 冬の透気の色に 死とは空の粒子になることならば 死とは空に帰ることならば この美しく澄んだ空の親密さと同じように 死もまた親密だ その時、暮れた青空に 一条の針のような月 僕の心臓はくっとツリあげられてしまった 睫毛みたいな月の針先が 青暗い空に突き刺さり やわらかな空の透夢を切っ裂いた 月の針のとがった刃先が ぎらりと光り とぎすまされた月の輪郭を空の頬に当てる 僕の頬にも月の刃が ひたりと 心臓のようにやわらかなところに 睫毛のような月は 突き刺さるようにねむる