月のツリ針























	


無限に澄んだ空

冬の透気の色に

死とは空の粒子になることならば

死とは空に帰ることならば

この美しく澄んだ空の親密さと同じように

死もまた親密だ 

 

その時、暮れた青空に

一条の針のような月

僕の心臓はくっとツリあげられてしまった

 

睫毛みたいな月の針先が

青暗い空に突き刺さり

やわらかな空の透夢を切っ裂いた

月の針のとがった刃先が

ぎらりと光り

とぎすまされた月の輪郭を空の頬に当てる

 

僕の頬にも月の刃が

ひたりと

 

心臓のようにやわらかなところに

睫毛のような月は

突き刺さるようにねむる