青いコンタクトレンズ
瞳を空にむかってひらく 青水をのこらず眼球の白く濁った海が吸い込んで 半球水平面に青いコンタクトレンズが 見開かれた空は青く澄んだ小鳥を見つける 透徹な空に小鳥はわずかに白く透き通った もう一枚のふわりと浮かぶ水面として そして幽霊の通り道として 朝露のふくらみを瞳に垂らす 瞬き 眼には泉が湧く 瞳に枯れ井戸の穴を その暗闇しかもたない 夜を裏返しにかぶった皺だらけの皮膚のことを思い出した 泉は豊かにただ少しだけ冷たく 溢れだす 空の水膜がはがれて 瞳の上に落ちてしまった 青いコンタクトレンズはよじれたまま 流れ去った 湧き水はただ光だけをあつめて ほうぼうに投げかえしていただけだ 濡れ跡には生き生きと産毛がそよぎ 眼球の上にのこった跡 とまった水たまりを飄々と風が駆けていった