再生事故、時のフリスビー










 

風の匂いなんて知らなかった

燃えうつった蝶の翅に

消えていった愛や死や満ち潮

その煙るように消えたいくつもの鉱石の影が

真っ裸で燃える真昼の路上に立たされている

量り売りされる身体

吊り下げられた緩慢な肉

ぶら下がった岩場の

火の消えた闇で

燻りつづける絶望の浜辺

波打つ唾棄が棒状の痛み

鈍磨された爪先で

無明の岩肌を探る

そこには私という身体の自由と

私という身体以外すべての自由があった

再生という暴力

滑落した奈落が実はただのアトラクションで

しかもそれが本当の奈落の底というような

平地の仕組み

急転し続ける精神の発火

絶望の転落事故が軽業師の誇り

再び崩れた蝶の翅は夢の半径に向かって

時のフリスビーをぶんなげる