メモ

















ほそぼそと
香りのない眼で
慕うように唇を震わす
触れた跡が記憶を吸って
あわあわと膨らんで
ぽつぽつぽつと実をつける
きみは願うだろうか
その肉のなかに咲く花のふくよかな花びらの
染めた時を
そこにながれた熱の引いた線の
結び目を
きみに近づくと僕は柔らかくなってしまう
きみに触れようとすると僕は優しくなってしまう

ぼくは優しくふれたい
人にやさしく触れることでぼくは自分を癒すことができる
ぼくが触れることを許してくれる
ぼくが触れることを求めてくれる
そのきみのやわらかさがぼくにはとても必要なんだ
ぼくはきみに優しくふれることができる
そんなふうに人に触れたことなんて
今までなかった
きみの弱さにふれるとき
その繊細さにふれるとき
ぼくは大切なものに触れることができる

ああそんなふうに曖昧で
儚く風に吹かれただけで消えてしまいそうで
それでもつながっていけるって
そんな静かな触れ先にだけある
やわらかな春風の駆けていくような
浮遊感