蜉蝣鼓、霧雨痛糸





















 
糸遊(いとゆう)きみの

夕暮(ゆうくれ)に

ホオリナゲル

遊糸(ゆうし)の花に

風がほのめく

かげろう空の望遠鏡になって

遠い星々の孤独な脇腹を摩りながら

永遠と話す

星癒し

透け見える薄い布帛となった

永遠の井戸に差しのべられた腕の

溶けいく手首の水洗い

波鏡の鼓(つづみ)が歩み去る人の手を

握って漕いだ小舟

浮かんだ夜中(やちゅう)曳き波に立って

眩んだ行為の硝煙が卵型揺り籠に揺すられて

卵白宙夢をひろげる蕊の根が左耳を塞いだ

水夜の扉開(ひかい)

泥りと吐(と)けた膿夢の愛できみは

樹日の乾木ほどけた震度

うずくまった日溜まりで

端っと放した野風の草笛に磨かれて

空夜に花飛ぶ蜉蝣の

影踊(えいよう)に掻かれた笑みを放って

薫る昼寝花一つきみ




















すべての痛過データが縦割りに落下してくる放射状の雨
千地の空板に傷みこまれた刻印字列の“時”が岩場に漏れた不快臭
あきらめた夜明けの花束に摘んだ花粉化粧
滑った皮膚の波間で燃えた汚れ衣が纏った
濯われた焦肌の粗目で事切れる風車のゆんぼ
夢まぐわい
拾った異骨の撫でやかな
遠点懐古の離れ業
腐沼の猊下の素潜り
渡り手は石を頭蓋に埋めて
搭乗された痛場の胸板に乗って酔っぱらった歯茎の
異化
とんでもない歯軋りに
外れた奥歯の友情も
卑近な例で正された鬱屈した箒跡
あなたの温めた懐風土の人魂整列
ばらされた球根の端々から浮き出した
荊が約束の踏み跡
渡世の雪路を行き交い
墓石の重さだけがずしりと閊えて
やっと出た秤の振れ刃
氷葉の朝日に触れた宿り雨が
リトマス紙にぽとりと垂れた
蕁麻の昇る合響に裸された
丑摺りの悲嘆した曙を破って
引きずり出た悪鬼の芋虫に
渡された一口の唾棄